TOP > 特別栽培米の眞木優 日記 > 4/23(土/雨)【食酢除草…№2】
まだまだあるお酢の力!台風や豪雨で弱った野菜を回復させる効果や除草効果について
出典:Think and Grow Ricci 農業の未来を実現する
化学的に合成された肥料や農薬を使用しない有機栽培や、環境に配慮した栽培を実践する人の間で「お酢」が活用されています。
お酢、すなわち酢酸は、安全性や防除効果が確認され、農薬登録を受けなくても使用できる特定農薬の一つであり、化学農薬が浸透する前から殺菌剤や忌避剤として活用されてきました。近年の研究では、植物を乾燥に強くする効果があることもわかっています。
関連記事:酢酸の効果!殺菌効果だけでなく、植物の乾燥耐性にも効果あり!?
目次
①台風や豪雨で弱った野菜を回復させる!?
②台風や豪雨で野菜が弱る原因
③弱った野菜がお酢で回復する仕組み
④濃度を薄めると植物活力剤に!?
⑤濃い濃度なら除草効果あり
⑥酢酸除草を行う際の注意点
①台風や豪雨で弱った野菜を回復させる!?
まだまだあるお酢の力!台風や豪雨で弱った野菜を回復させる効果や除草効果について
そんなお酢には、台風や豪雨で弱った野菜を回復させる効果もあると言われています。
②台風や豪雨で野菜が弱る原因
まず、台風や豪雨の後、野菜が黄色くなることがありますが、これは台風や豪雨で圃場に水が溜まることで毛細根がダメージを受けることが原因です。
根が痛んだり腐ったりすると、植物は水はなんとか吸い上げられてもミネラル分が吸えなくなってしまうのだとか。葉緑素を保つには窒素以外にも、葉緑素の生成や光合成を助けるマグネシウムや塩素といったミネラル分が必要です。しかし天候が回復して蒸散が始まると、ダメージを受けた根は水ばかり吸い上げてしまいます。
しかもこの際、比較的水溶けやすい窒素ばかりが植物に届けられるので、実は台風や豪雨後に水を吸い上げ始めた農作物は窒素過多の状態にあります。
光合成を助けるミネラル分の不足は、植物の品質にも悪影響を及ぼします。植物の細胞壁は炭水化物を材料にして作られています。炭水化物は光合成で生成されますが、光合成不足になることで炭水化物が作れなくなり、ゆえに細胞壁の合成が追いつかず、野菜はふやけたようになってしまいます。
③弱った野菜がお酢で回復する仕組み
ではどのようにして、お酢がこのような農作物を回復させるのでしょうか。
2020年9月に刊行された『現代農業9月号』によると、お酢がエチレンやアブシジン酸のように栄養成長を一時的に抑制するとありました。
栄養成長は、根から水や養分の吸収が活発になり、枝や葉が伸びて光合成が始まる時期の成長を指しますが、この際、植物の細胞分裂は盛んになります。細胞壁を作り出すためにたくさんの炭水化物が消費されますが、お酢を与えることでそれを一時的に抑制すれば、炭水化物の消費量は減ります。
植物は元来、栄養に乏しい厳しい環境では根が発達します。栄養成長を抑制し、細胞壁生成に消費されていた炭水化物が根の修復に回ることで回復が見込めます。この処置を行う場合には、酸度4.5%の食酢を30〜50倍に薄めたものを葉面散布します。
④濃度を薄めると植物活力剤に!?
なお酸度4.5%の食酢を100倍以上に薄めたものの葉面散布は栄養成長を促進します。千葉県野田市ではお酢がもつ植物活力剤としての効果を利用して、市内産の玄米を原料とした玄米黒酢を水稲に散布する米作りを行っています。一般的な食酢よりもアミノ酸やミネラルが豊富なのだとか。
・・・・・・・【千葉県野田市さんの事例】・・・・・・・・・・・・・・・・
安心・安全な野田産米を 黒酢散布でブランド化 ~平成 21 年の本格実施から約 512 ヘクタールに拡大~
市は、一般米との差別化 を図り、安心・安全な野田産米の「ブランド化」を目指して、 水稲への農薬の空中散布を取りやめ、代わりに「玄米黒酢」を散布する農法(コメ作り) に取り組んでいる。
黒酢を使った米の生産者は全員減農薬、減化学肥料による米の生産に 取り組んでいる。 黒酢米は、平成 20 年の試行的な栽培実験の結果、一般的な流通米と同等の出来となった ことから、21 年から木野崎、目吹、船形の3地区約 260 ヘクタールで黒酢散布による米作 りを本格実施。
以降、年々面積を増やし、今では、小山、関宿、木間ケ瀬、今上地区を加 え、7地区約 512 ヘクタールに広がり、市内全稲作面積の約半分を占めている。 有人ヘリコプターによる黒酢の散布は、1 回目が7月 16 日に、2回目が8月 13 日に行 う予定(関宿、木間ケ瀬、今上地区はラジコンヘリで散布予定)。
食酢に含まれる酢酸には植物活力剤効果があり、野田市で使用している玄米黒酢は普通 の食酢よりもアミノ酸やミネラルが豊富なため、有用微生物の繁殖を助ける効果も高いと され、すでに新潟県や秋田県の稲作農家で導入されているが、市が助成する例は全国的に も珍しい。また、年間を通じて、この「黒酢米」を、市内公立小中学校、公立幼稚園、公 立・私立保育園の子どもたちの給食として提供している。
●黒酢散布の拡大に向け助成も 市は、平成 18 年度から減農薬や有機堆肥による農業を進めるため、有人ヘリコプターに よる農薬の空中散布を取り止め、20 年の試行的栽培以降、黒酢米の生産の拡大に努め、23 年度までは散布作業料(約 580 円/10a)と散布資材費(約 120 円/10a)の2分の1を助 成してきた。24 年度からは、さらなる拡大を目指して、散布作業料、散布資材費の全額を 助成している。
年々黒酢を散布するほ場も増え、今年は木野崎、目吹、船形、小山、関宿、 木間ケ瀬、今上地区の一部をあわせて約 512 ヘクタールになっている。
●害虫対策は雑草管理で 黒酢の散布は、カメムシなどの害虫対策としてではなく、植物活力剤効果を期待して実 施しており、害虫対策としては、ほ場周辺の雑草管理が有効とされていることから、出穂 前に除草を行うことで対応している。なお、黒酢を広範囲に散布するので、周辺環境の影 響調査も、昨年に引き続き実施する。
●特別栽培米に取り組みブランド米に 今後は、黒酢散布を土台として、県が一般米として定める標準的な栽培方法より化学肥 料と化学合成農薬を5割以上削減した「特別栽培米」の生産に地域ぐるみで取り組み、安 全・安心な野田産米の安定供給を目指す。
玄米黒酢を使用し特別栽培米の栽培方法により生産された米は、昨年度まで、ちばエコ 農産物の認証を取得し、「黒酢米」として野田市のブランド認証をしていたが、ちばエコ農 産物の認証制度の一部が変更されたことにより、現状では、認証を受けることができなく なったことから、今年度は、野田市農産物ブランド化推進協議会が、「黒酢米」のブランド 認証をする予定となっている。
黒酢散布と併せて一般米との「違い」を際立たせ、ブランド化が進むことを期待してい る。 また、市内農産物直売所「ゆめあぐり野田」や船橋でちば東葛農協が開設する農産物直 売所「ふなっこ畑」で販売している黒酢米は売れ行きもよく、黒酢米への消費者の関心は 高いと考えている。
問合せ=農政課・内線 2340
担当:山中☎090-4660-7453/野見山☎090-2634-8986 ※当日、散布を実施するか否かは、午前4時 30 分ごろまでに判断します。担当者にご 確認をお願いします。 野 田 市
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【野田市役所農政課】さまより、眞木優受信(2022/04/28 (木) 15:58)
黒酢米の玄米黒酢散布濃度について
先日の野田市の黒酢米の件でご質問いただいた内容につきまして回答いたします。
○玄米黒酢(原液) 酸度4.5% PH3.5
(石山味噌醤油株式会社製造)
*この玄米黒酢原液の原料(玄米)は、野田市産の玄米を使用して製造されております。
○散布濃度 有人ヘリコプター 10倍希釈(3L/10a散布)
無人ヘリコプター(ラジコン) 8倍希釈(0.8L/10a散布)
補足
使用時期、散布回数(野田市の場合)
使用時期は基本的に、分げつ期、幼穂形成期、減数分裂期、登熟期の4回で、
野田市では、減数分裂期と登熟期にてヘリコプターによる空中散布を実施している。
(その他の時期については、希望者が本田流し込みで実施。10aあたり2Lを10倍希釈で流し込み)
この黒酢米の散布規準は、玄米黒酢農法の特許を取得している
石山味噌醤油株式会社(新潟県)と共同して試験を重ねたうえで
決定しております。(あくまで野田市としての規準です。)
黒酢栽培の注意点しまして、濃度によっては逆に菌が繁殖
してしまう等のリスクもありますので、詳細につきましては
石山味噌醤油株式会社(養田様)に確認されると良いと思います。
以上、簡単ではありますが参考までにお送りいたします。
よろしくお願いいたします。
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⑤濃い濃度なら除草効果あり
まだまだあるお酢の力!台風や豪雨で弱った野菜を回復させる効果や除草効果について|
お酢は雑草対策にも役立ちます。強い酸性やアルカリ性は植物を枯らすのに効果的です。お酢を濃い濃度で用いれば、その強い酸性成分が雑草を根から枯らします。『現代農業9月号』では、濃度を調節することで選択的に除草する実験の概要が掲載されていました。
農薬を使用していない、雑草が優勢な圃場で、酢酸を濃度別に複数回噴霧し、イネと雑草がどのように影響を受けるか、という実験です。酢酸は酸度15%、10%、5%、2.5%で、酸度10%以上だとイネにも被害が出てしまったが、2.5%ではコナギやホタルイなどの雑草は枯れてもイネに被害はありませんでした。
もちろん、散布時間帯や希釈倍率によって効果が変わってしまったり、草種の葉齢によっても効果が異なるため、噴霧すればいいというわけではありませんが、酢酸に耐性がある農作物であれば、噴霧するだけで選択的に除草できるのは魅力的な話です。
なお原液〜50倍程度のお酢はコケの除草にも効果的です。
⑥酢酸除草を行う際の注意点
先で“散布時間帯や希釈倍率によって効果が変わ”ると書きました。散布した後に雨が降ってしまうようだったり、朝や夕方など露がある時間帯、曇天時は効果が落ちるので避けましょう。また先の実験では、圃場環境が15℃以下になると、酢酸が低濃度であってもイネに障害が出たとありました。イネの開花期に散布すると不稔が発生しやすいともあったので、実際にお酢を活用する場合には、除草目的であっても薄い濃度から始めることをおすすめします。
*参考文献
現代農業9月号(一般社団法人農山漁村文化協会、2020年9月)
栄養週期栽培の施肥の特徴 – 日本巨峰会
除草剤を酢から作れば安全!酢の除草効果やデメリットについて紹介|生活110番
植物の近くに酢を置いたら枯れました。原因を教えて下さい。|みんなのひろば 一般社団法人日本植物生理学会